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第2編 蛍光体法の将来性
1 ガンタンネル
2 私の論文
3 噴流の可視化
第2編 蛍光体法の将来性
この編では、蛍光体法の可能性・発展性について述べる。
どなたか研究を引き継いでほしい。
本書を読む前に、「第1編 1章 2 修士課程時代」に蛍光体法の詳細な特性を記載している。まずはこれに目を通しててから、本編を読んでほしい。
私が日本機械学会第844回講演会1974年8月26・27 日に発表した論文名は、「蛍光体を用いた流れの可視化第1報:原理及び特徴」(参考文献2)である。当時の嫌なことを思いだしたくなかったので、手元にあった論文冊子はとっくに廃棄していた。
本書を書くために、わざわざ国立国会図書館関西館に出向き、インターネットを通じて入手した。(本論文の国立国会図書館での請求記号はZ16-2041 844巻回 167-170ページ)
本書のための資料集めで、偶然インターネットから見つけた文献があった。
東京工業大学公開特許
東京工業大学大学院理工学研究科
流体計測方法
特願2006-141636
私が日本機械学会に1974年8月に発表してから2006年の上記公開特許論文までの「蛍光体を用いた流れの可視化」関連の文献は見つからなかった。本研究に32年間の空白があったことになる。これはどうしたことなのか。おそらく、論文名に「蛍光体を用いた流れの可視化第1報:原理及び特徴」とあり、今後、第2報・第3報・第4報…と続報されるものと読者は思ったに違いない。「この研究は神戸大に任せて、しばらく様子を見よう……」と思ったのだろう。
そのうち続報がなく、しだいに忘れられてしまった。時がたって、2006年東京工業大学の田中氏らが同様の発見をした。過去の文献を調べても古すぎるので出てこない。新規性があるということで特許出願に至った。……このような経緯があったのではないか。
第2章 蛍光体法の将来性
①特徴
前述の公開特許には次のように記載されている。完璧な内容なので引用させていただく。なお、この公開特許には蛍光体として有機EL素子に使われるイリジウム錯体が使用されている。
新技術の特徴・従来技術との比較
トレーサ粒子が不要なため,微細・複雑な形状の流路に適している
流速算出のための高度な画像解析が不要
撮影は1回のみ
流線を直接測定できる
流速,流れ方向,濃度を同時に測定できる
(蛍光剤を選択することにより,温度・ph等を測定可能)
(引用終了)
上記の特徴に、私の研究結果を追加する。
1、高速流の流線・流速の可視化の可能性がある。
幅50cmのブラウン管式テレビの電子線の走査線掃引速度7,875m/秒。この高速性能に注目すると、蛍光体の高速流の可視化性能をまだ十分出しきっていない、と感じる。レーザー強度が大きくできれば、100m/秒の気流・水流の可視化ができるかもしれない。
2、蛍光体粒子が小さいので乱流拡散しやすい。
乱流強度の測定法にできる可能性がある。
②問題点・注意点
水流の可視化について、乗り越えなければならない壁はない。技術的にはほぼ確立している。
気流の場合に2つの問題点がある。
一つは、観測窓などの壁面へ付着する「蛍光体付着」問題がある(壁面の無い噴流測定では、この付着問題は起こらない)。インターネットで「粉体 付着防止」で検索すると、いろいろ解決法が出てくる。この中に解決の糸口があるかもしれない。観測窓の付着蛍光体を吹き飛ばして即撮影というのもある。
もう一つは高速気流とのずれである。この場合の対策として、残光色と比重の違う2種類の蛍光体を混入させて可視化すると、2色の残光が同時に撮影できる。この写真から比重の違いと残光のずれ量の関係性を求める。この結果、蛍光体比重が空気比重に近い場合の蛍光体の挙動を推測できるだろう。
回流型(水槽・風洞)の場合に注意点がある。
水流・気流にレーザー光を当て続けると、蛍光体が回流する間に何度も光を浴びる。この結果、常時、蛍光体は残光を発するようになり、測定点とその背景との明暗の比が小さくなり、写真判別しにくくなる。
対策としては、レーザー光を当てる時間を短くすること。もう一つは、回流回数を減らすために水槽・風洞の容量を大きくすること。
お分かりだと思うが、念のために、水槽・風洞は乱流を抑えるために、整流格子・網・扇状の羽根(べーン)を設け、急な曲りや、急な断面変化を避け、滑らかに緩やかに流れを導くこと。回流型は上流の乱れが下流をさらに乱し、この繰り返しで、乱流増幅器になってしまうことがある。
日本には蛍光体とLEDレーザーのメーカーがひしめいている。外国研究者よりも断然有利な立場にある。近年、蛍光体を励起するLEDレーザーが安価に、高出力になってきている。追い風が吹いている。地道に研究を積み重ねていけば、産業界に多いに貢献できるはずだ。
どなたか研究を引き継いでほしい。
1 ガンタンネル
3 噴流の可視化
市販の円形の塩化ビニルホースの一端を楕円形に変形させる。それを水噴流の出口とする。噴流出口に、遮光のためアルミフォイルで包んだ紫外線ビーム発生装置を置き、楕円の短径方向にビームをあてる。
出口流速2.66m/秒、塩化ビニルホース内径の楕円形の長径15㎜、短径3㎜、蛍光体混入濃度12.9×
気体噴流の計測には、矩形風洞のようにアクリル板による紫外線の減衰がなく、アクリル板への付着もないので、蛍光体法による可視化が容易である。
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